時は木枯らしの寒い冬のある日であった。
シェゾに呼び出されたラグナスは、このクソ寒いのに一体何の用だと毒吐きつつ指定場所の人気のない丘で大人しく待っていた。
しかしシェゾが指定した時間はとおに1時間ほど過ぎている。
それなのに肝心のシェゾが現れないことに、ラグナスはだんだんと苛立ちを覚え始めた。
やがてそれが高じて、風に舞い散る落ち葉を追いかけては踏みつけるという微妙な一人遊びを始める青年という妙な構図が出来上がる。
だがそれも長く続かなかった。
落ち葉を一枚踏み損ねたところで、ふと視線をめぐらせると、シェゾがぼーっとこちらを眺めている。
そしてそれとばっちり目を合わせてしまったラグナスは、しばし硬直した後ゆるく片手を挙げて挨拶をした。
「……遅かったね」
「ああ」
「…一時間も人待たせておいて、一体何の用なんだい?」
なんとなくバツが悪く、視線をそらしながら腕を組むラグナスに、シェゾは短く唸って頷く。
「ちょっと訊きたい事があって…な。
…だが今、それとは別に訊きたい事ができた」
「?」
「…いい歳して、落ち葉踏んで歩いて楽しいか?お前」
「…いつから見てたんだよ…」
ラグナスは、その問いに答えることはできなかった。
「まあ、それはさて置き」
気まずいような空気をまったく気にせず、シェゾは今までの呆れたような瞳ではなく、真剣な目でラグナスを見つめた。
その真剣な目に、ラグナスは少し気を張り詰め、おのずと真剣な顔をする。
「…さっきも言ったが─お前に、訊きたい事があるんだ」
初めて聞く真面目な声色。
ラグナスは自分が、一体何を訊かれるのかとだんだん緊張してくるのがわかった。
「…なんだい?俺に答えられることなら、答えるけど」
「あぁ……。実は…前々から気になっていたんだ…」
と、いきなりそこでシェゾはラグナスの両肩を掴んだ。
ぎょっとするラグナスに、シェゾは真面目な表情を崩さずその顔を見つめる。
「なぁ…」
「……な、なな、何だよ?」
切れ長い青い瞳から目をそらし、ラグナスは何故か紅潮する頬を隠すように俯いた。
シェゾはかなりの美形である。
それは、同じ男のラグナスから見ても確かな程だ。
そんな美形にこんな至近距離から話しかけられ、まっすぐ見つめられようものなら─相手が同性だろうがなんだろうが赤くもなるだろう。
しかしシェゾは、赤くなっているラグナスを気にせず、言葉を続けた。
「ジャイ○ンの中で、心の友は一体どの位置に値するんだ?」
…長い─
長い、沈黙の後。
「……はい?」
ラグナスは、己でも思うほど、抜けた声を上げて聞き返していた。
もちろん、この間もシェゾはずっと真顔である。
「だから、○ャイアンの中で心の友というのは一体どの位置に値するのかということだ。
親友より上なのか下なのか。そもそも友人なのか。
『心の友』とよくのたまっているものの、実際その心の友をパシリに使っているのを見ると、俺は気になってしょうがない」
「…えーと……」
「まだある。ジャ○アンの本名は剛田○だが妹はジャ○子と呼ばれている。親からもだ。あれはどうしてなのか…」
「………………」
シェゾは言いながら、すっかりラグナスの肩を放し、延々と話し続ける。
状況がまったく判断できないラグナスには、ただその様子を目を点にして眺めるしか術はなかった。
そして─
シェゾの疑問が、『○比家の間取りがちょくちょく変わるのは何故なのか』という域に達した頃、ラグナスは彼を放って帰路へついていた。
あのような疑問のため、一時間強もこの寒い最中待たされたという、行き場のない憤りを胸に抱えたまま。
-終わっとけ-
管理人より>二万ヒットありがとう小説です(爆)
微妙すぎゴメンorz
……ちなみにシェゾさんの疑問は私の疑問です(死)
PCUP=2004年12月15日
モドル