シェゾの誕生日事件(※「*BIRTHDAY*」参照)から、早くも数ヶ月経っていた。
未だに、闇の剣に科せられた「人型禁止令」は解かれていない。
まあ、あのような事をしたのだから無理も無いか。
闇の剣は半分、そう諦めていた。
半分。
そう、半分である。
つまり半分は諦めていないわけだ(笑)。
いつ主の気まぐれで禁止令を解いてもらえるかと内心ほのかに期待していないと言えば嘘になる。
─あれ以来、自分は随分欲深になったと思う。
主に触れていたいと思う。
この手に抱いていたいと思う。
以前はただ、最も傍にいて、ともに闘う主と従者で満足していたのに。
それこそ、例の筋肉女(ルルー)の所の牛(ミノ)よりはマシだと。(酷)
『─……』
思考で溜息を吐く。
あくまでも思考なので音になる事はないが。
もう叶わないのだろうか。
愛しい人を抱きたいと思う願いは。
『…(沈殿』
ずーん、と。
闇の剣らしく負の感情を巻き散らかしていると、ふと主からの『お呼び』がかかる。
『─応』
普段より、いくばか低いテンションで応えた。
「何だ。今日はまた豪く不調そうじゃねえか?」
『…主の気のせいだろう』
不調の原因(シェゾ)は、闇の剣の内情など露知らずに言う。
曖昧に誤魔化す相棒に、シェゾはそれでも興味なさそうに鼻を鳴らして片付けた。
もう少し…もう少し気にしてはくれぬか主っ!(涙)
我侭な事を思いながら、それでも無言でいる闇の剣。
健気である。
「…闇の剣よ」
『…何だ?』
「お前。俺と逢った日を覚えているか?」
『…当然だ…』
その時から、大切な主だとずっと想って来たのだから。
『それがどうかしたのか?主よ』
「…お前ホントに覚えてるのか?」
『は』
「今日、だぞ?」
『………………。』
最近ずっと塞ぎこんでいた所為で日付の感覚が(いや元より無いに等しいが)狂っていたらしい。
何てことだ。
闇の剣は再び沈殿する。
シェゾが、どうして自分を呼んだのか考える前に。
「その様子じゃ、忘れてたんだろう」
『そ、その様な事は……』
「…まぁ、いいが」
『…』
ああ、怒らせてしまった…。
闇の剣はもう、立ち上がる気力も無くなりそうだった。
が。
「そんなわけで、今日をお前の誕生日、ってことにしたからな」
『……は』
間の、抜けた『声』が出ていたと思う。
「俺とお前が出逢った日。それがお前の誕生日。文句あるか」
そういう割りに、反論は認めないという語調。
闇の剣は何が起こっているのか分からず沈黙してしまった。
「…あー、一応…その、何だ。お前に…誕生日を祝ってもらったし…。
俺も、…祝ってやろうかと思っただけだ」
シェゾは、反応の無い相手に不安になったのか少し困ったように続けた。
それから、
「だから今日だけ、…解いてやる」
そう呟いて闇の剣にかけていた魔力による圧力を解いて、人型をとらせる。
「…」
夢か、白昼夢かと混乱する闇の剣に、シェゾがむっとした顔で睨んだ。
「不服か」
「そ、その様な事は無い…!」
「なら少しは嬉しそうにしろ。俺が祝ってやると言ってるんだぞ」
照れ隠しか、ぷいっと自分に背を向ける主。
「…」
それを見た後、確かめるように手を握ったり開いたりする。
確かな感覚。
夢ではない。
「主…」
「……。誕生日オメデトウ、だ」
ちらり、と。横目でこちらを見て呟く。
「…アリガトウ。主」
その時、自分は確かに笑ったのだと思う。
もう、誕生日を貰ったというだけでも嬉しいのに。
なんと愛しい事をしてくれる。
「…」
しかし、と躊躇う闇の剣に、シェゾは苦笑して見せた。
「今日は特別だ。好きするといい。……後に後悔しない程度にな」
それは好きにするといいとは言わん、と、突っ込みを入れる前に、また前のように腕に抱きこんだ。
A HAPPY BIRTHDAY.
+END+
管理人>紫亜様よりリクエスト
お待たせいたしましたー!!!(全くだ!)闇シェ(続編)です!
剣さんへたれでゴメンナサイ……(涙)
どうしてこんなになったのか…。…よっぽどお仕置きが利いたらしいです(笑)
PCUP=2004年7月12日
モドル