「シェゾ?」





 返事も。




 「…シェゾ?」





 応えも無い。




 「シェゾ…?」



 可笑しなくらい声が掠れて。














 「…シェゾ…」




 (リカイデキナイ。)




 (ワカラナイ。)




 どうしてシェゾは応えてくれない?




 (リカイシテハイケナイ。)














 「馬鹿だな…」




 苦笑じみて、横たわっていた彼を抱き起こした。




 「俺なんか、庇うから」




 胸の、赤黒い染み。




 口の端から流れる、もう冷え切った朱色。




 色を失った、彼の顔の白はさ…とても、綺麗で。



















 「…ほら見ろ。血が止まらないじゃないか…」
 「……なぁ?シェゾ…」
 「……どうして俺なんかを庇ったんだ?」
 「お前らしくないじゃないか?」
 「…なぁ?」









 ああ、お前は、紅い色も似合うんだな…。




 綺麗だな…。














 (リカイシテハイケナイ。ワカッテハイケナイ。)
 (リカイシタクナイ。ワカリタクナイ。)
 (コワレテシマウ。)



















 ちらり、ちらりと、白い雪が落ちてくる。
 灰色の空を見上げて、寒いな、と思う。




 「シェゾ…雪、降ってきたな……。どうしようか?」

 なあ。(ミトメタクナイ。)
 なぁ?(オマエノシヲ。)
 ……シェゾ?(ダカラ。)







 (ヘンジヲシテクレ。)



 (ワラッテ、オレノホオヲナデテ。イツモノヨウニ。)














 「雪、冷たいな…」




 (ハヤク。)


 (アンシンサセテ。ダキシメサセテ。)

 (ナァ。)


 「シェゾ?……なぁ…」














 力が入っていなくて重たい男の身体を、抱きなおす。
 それから、冷えてしまった頬に唇を近づけて、触れた。




 「冷た…」



 苦笑が洩れる。









 「なあ…シェゾ」







 「…好きだよ?シェゾ」














 だから早く起きて。



















 灰色の空から堕ちる、雪に。
 俺は何もせず打たれ続けた。



















 ただ動けなくて。
 動いたら壊れてしまいそうで。
 何が壊れるのかは分からなかったけど。
 動いちゃいけないと思った。
 シェゾと一緒に、いるためには。



















 もう一度天を仰いで。
 いもしない神に、問うた。
 『カミサマ。…これは、俺たちの罪に対する罰なのですか』
 『ならば何故、俺ではなく彼に罰をお与えになったのですか』
 いるわけ無いから、答えは返ってこないけれど。



















 「─シェゾ。…愛してるよ」









 だから。









 早く起きて。
 俺を見て。
























†…END…†


管理人より>muzuki様よりキリバンリクエスト

muzuki様>>はい〜。『ラグナスとシェゾ(ダーク系)』終了です〜…。
洒落にならん暗さです(爆)す、すいませ…(汗)


PCUP=2004年4月6日


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