シェゾが、珍しく珍しいものを口にしていた。

 それは、黄金色の、蜂蜜。
 瓶に指を突っ込んで、適量を掬っては口へ運んでいく。
 「…行儀の悪い…」
 Dシェゾはぽつりと呟いてスプーンを差し出してやる。すると、シェゾはそうされて初めてDシェゾの存在に気付いた。
 「いいじゃねーか別に。…てか何時から居た?」
 「…今だ」
 受け取ろうとしないシェゾの口に、強引にスプーンを突っ込んでやって、シェゾは簡素に答えて腕を組む。
 シェゾは、大して興味もなさそうに『ふぅん』と鼻を鳴らし、口にくわえたスプーンをぷらぷらと揺らした。
 それから、思い立ったように、また蜂蜜の入った瓶に指を入れる。
 む、とするDシェゾを横目に、また黄金色を掬い上げた。
 「…お前な。人がせっかく─んっ?」
 咎めようとした口に、蜜ののった指が刺し込まれ言葉が中断される。
 舌にたっぷり蜂蜜を塗られて、その甘さに眉を寄せるとシェゾが得意げに笑った。
 「結構美味いだろ?ソレ」
 「………甘い」
 「そりゃ、な」
 くくく、とシェゾが笑いを噛み殺す。Dシェゾが、口内に残る甘さに辟易しているのが楽しいらしい。
 『む』と、Dシェゾは唸った。
 きっと、Dシェゾが蜂蜜を苦手と知った上での行動であろう。
 なんだか無性に悔しかったので、仕返しを決行する。
 抜かれていく指を、腕を掴んで止めて、舐る。
 未だに蜂蜜の味が残るソレを、丹念に吸い、甘噛んでやると、口に含んだ指が慌てたように暴れ始めた。
 それでもしつこく舐ってやって、蜂蜜の味が消えた頃、ようやく解放する。
 慌てて引っ込められる腕に、くすりと笑った。
 そして。

 「ああ…でも。………お前がそうやってくれるなら食える…な」





 とどめ。





 瓶を抱え、スプーンを口に咥えたまま、シェゾは硬直する。
 にやにやと笑って見守っていれば、長い間をおいた後、顔を真っ赤に染め上げた。
 それから、怒声とも、罵声と持つかない声を上げるシェゾにくるりと背を向けて逃げ出す。
 ─ガシャン、という音の後に、追いかけてくる足音。
 ちらりと振り返ると、黄金の蜜が床に散っていた。
 ─勿体無いな、と。ふと輝きに意識を奪われて、その瞬間。
 シェゾの投げたスプーンが、カンと音を立ててDシェゾの頭にヒットした。




ΜENDΜ



 管理人より>携帯HP1800番リクエスト 
  式瀧様>やっとUPできました…(ホロ)
  甘いですか?甘いですか?(聞くんじゃない。)


PCUP=2004年06月12日


モドル
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