─酷い男と罵られてもいいと、人の良い笑顔で笑った。
 


 酷い男



 ラグナスは常に、人の良い笑顔の裏であることを願っていた。
 それは決して表に出ることはなく。
 出すこともない。

 ─『彼が不幸であるように』

 それが願い。
 なんと酷い願いかと、自分で気付いていて、願うことをやめない。


 けれど、彼が不幸であれば、自分は彼の傍に居られる。
 そして救いと称して、その心に触れていく。
 決して、内心の喜びを表に出さずに。

 酷い男と罵られても良い。
 本当のことなのだから。



 愛しいと思う人の傷つく様を見て、困惑でも悲しみでもなくただ喜びを感じる。





 君よ。不幸であってください。
 この酷い男が君の傍に居られるように。
 君が幸福であるなら、俺がただ、また君が不幸になることを願い続けるから。

 けれど、いつか。
 この想いが通じて、仮にでも受け入れてもらえるなら。
 俺はきっと、君を、俺の次くらいに幸せにしたいと思うよ。

 勇者である自分が、こんなにも身勝手で酷い男であることを。
 彼は知らない。
 人の良い笑顔を浮かべて、ただ、その時彼が欲するであろう言葉を囁いて、琴線に触れていく。





 ─酷い男。





 ラグナスが、そう自分を罵った後、考えにのめりこんでいた彼を呼ぶ声がした。
 怪訝そうな顔をして自分を見下ろす声の主に、『何でもないよ』と微笑んで返す。
 端正なつくりのそれが興味なさ気にすぐ逸らされる。声の主は、ラグナスの胸中を知らないだろう。










 自分がもっともキレイだと思っている男が、とても酷く、身勝手な男だと気付けていないのだから…。



















 **END**

 管理人より>…何ヶ月ぶりの小説うpだか検討がつきません(死)
 ラグさん黒い人で。
 ちなみにプロポーズは「君を幸せに出来るかどうかわからないけど俺が幸せになる自信はありm(殴打)


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