「シェゾ」
 「─ん…?あぁ…、お前か…。何の用だよ」
 シェゾは、『お邪魔します』も言わずに部屋に上がり込んできた男に、軽く一瞥をくれてすぐ視線を元に戻した。手元にはビールの缶。口には煙草を咥えたままなにやらテーブルを睨んでいるようである。
 「…何を見ている?」
 そのシェゾと、一部を除いて全く同じ容姿の男が彼と同様にテーブルへ目をやる。
 そこには、大方ここにはありえないはずの黒い物体。
 男は真紅の瞳を細めた。
 「─銃か。…何をした。シェゾ」
 「するか。朝郵便受けに入ってたんだよ」
 「…ふむ」
 言われて、窓の外を見やる。直に日が暮れ、太陽の代わりに月が昇る時間だ。
 「朝からずっとその体制か?」
 「考えてた」
 「何を」
 「誰が何の為にコレを入れたのか」
 煙草の灰を落とし、ビールに口を付けて一気に煽る。
 「ドッペル。…お前に心当たりは?」
 「…そういうお前はどうなんだ」
 ─ドッペルと呼ばれた男─Dシェゾは、オリジナルと唯一異なる瞳を銃に向ける。
 「…弾は?」
 「一発」
 「─ふぅん…」
 興味深そうに銃を眺め、Dシェゾは薄く笑った。
 「ロシアンルーレットでもするか?」
 「…」
 シェゾは銃を手に取り、Dシェゾに向かって口元を吊り上げる。
 「…やってみるか?」
 「─運試し、な」
 ─自ら銃口をこめかみに当て─、躊躇いもなく、引き金を、引く。

 カチン、と、音がしたのみで、弾は出なかった。

 「…死に損なったな」
 Dシェゾが笑う。

 「バーカ」
 シェゾも笑う。

 「─ま、プレゼントって事で有難く頂くか」
 しっくりと、妙に手に馴染んだグリップを手離したくないのか、両手でしっかりと握る。
 Dシェゾがそれを苦く笑い、シェゾの口元へ手を伸ばしてきた。
 「─ん?」
 疑問の声を上げるシェゾに構わず煙草を引ったくり、代わりに自分の唇を押し付ける。すると、誘うように口唇が開き、舌を滑らせれば苦味と、酒の味がした。
 「─何だよ」
 「そういう気分になった。…不服か?」
 「ロシアンルーレットでか?」
 「…銃で」
 「…ヘンタイ」
 至近距離で、鏡を見ていると思うほど似ている顔が笑う。
 「半日近く、お前の思考をコイツが埋め尽くしていたのかと思うと、な」
 「無機質にヤキモチ妬いてんじゃねぇよ」
 シェゾは笑いながら銃をテーブルに置いた。それに、Dシェゾが満足気な笑みを浮かべれば、妖しく微笑んで両腕を首に回す。
 「これは近親相姦になるのか?」
 「…どちらかと言えば自慰に近いんじゃないか?」
 「はっ。究極だなそれは」
 その先は、合わせられた唇の奥に消えた。









 銃の持ち主は、未だ知れない。









 †END†



管理人より>麻科逢さまに捧げたもの。
 げふ。…。スイマセンホントに落ちてないし。
 しかも色々ギリギリ…(アウトだ。)
 某BLゲープレイ後なので銃と、究極の○○。(マテ)

PCUP=2004年7月11日

モドル
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