昔々あるところにシェゾという闇の魔導師がいた。
 闇の魔導師には敵が多い。故に命を狙われる事も多かった。
 しかし、いきなり斬りかかられてもそれに応じ、そして力でねじ伏せて勝つ。
 それが彼のいつもの光景だった。
 そして今日も──。





 「狼虎滅却ぅう…国士無双ッ!!」
 「え。待て、ちょ!ゲーム違」
 
 ちゅどん。

 突っ込み待ちな技を放ちつつ、その突っ込みを待たずにいきなり斬りかかってきた相手─自称勇者のラグナスを吹っ飛ばす。
 「ひ、卑怯者ーーーーっ!」
 「うるせぇ、勝ちゃあ良いんだよ!」
 というか卑怯とは先に不意討ちをしてきた者の言う台詞ではない。
 きゅるきゅる吹っ飛んで、最終的には『ドぼちゃ』という小気味の良い音を立て─ラグナスは、ピンポイントにそこに存在した池に沈んだ。
 「…ちなみに実際の狼虎滅却・国士無双は吹っ飛ばし効果はないぞ」
 誰にともなく言い、ニヒルな笑みを残してシェゾは踵を返した。
 ラグナスが鎧を纏ったまま沈んだ池を背に、『戦いとは空しい』とか言い出しそうな背中で帰路への道を辿る。
 ああ、今日の夕飯何にしよう。カレーがいいかもしれない。
 そんなことを考えていた矢先だった。
 
 「そこの。そこの黒いお兄さん」
 
 「あ?」
 多分、自分が呼ばれたんだろうと、声の方に振り向いた。
 そこには、未だにラグナスが浮かんでこない池がある。
 「……?」
 首をかしげると、池の中央辺りから突然「何か」が出現した。

 「呼ばれていないがジャジャジャジャーン!私はこの池の女神!
 黒き青年よ、お前が落としたのはこの勇者かこの勇者かこの勇者かこの…」

 「何してんだ、ヅラ魔王」
 「ヅラって言うな!!もう生え揃ったわ!」
 開口一番のシェゾの言葉に、池の女神ことヅ─いや、闇の貴公子サタンは憤慨した。
 ……白いワンピース姿で。
 「………………。目覚めたか…」
 「そんな明日には投獄される春先の変態を見るような冷たい目をするものではないぞ。今の私は魔界のプリンスサタン様でなく、名も無き池の女神様だ」
 「いやもうお前が女神って時点で間違ってる」
 ぴしゃりと言い放つが、サタンは動じない。池の中央で(一応)神々しい(と敢えて言っておく)までのオーラを放ち、佇みながらもう一度最初の台詞を繰り返した。
 「コホン…。あー。もう一度問う。お前が落としたのは─」
 「ぼくは良い子だから何も池に落としてません。センセイサヨーナラ」
 「ああはい、それじゃあ気をつけてね…って、ヲイ!」
 関わりたくない、と断ち切って帰ろうとするシェゾの襟首を引っつかんでサタンはまた声を荒げた。
 「それじゃあここで話が終わってしまうだろうが!」
 「…それが何か……?」
 「純粋な瞳で首を傾げるな!全然きこりの話になっていないではないか!?」
 「知らん。ていうかきこりってもう最初から違うじゃないか」
 「これからなるんだ」
 エヘン、とサタンは胸を張ってみせる。
 シェゾは唸った。
 ぶっちゃけ、こんな水浸しの女装魔王の道楽に構うくらいならさっきのようにラグナスとチャンバラでもしていた方がマシだ。
 しかしそのラグナスはいまや亡き人となった。
 「…ちっ…肝心な時に使えん奴だ」
 物凄く酷い事を言いつつ、その原因が自分であるとことを棚に置いて溜息を吐く。
 どうせ、道楽には命を懸けているこの魔王だ。ここではねのけても今度は貞○になって家に押し寄せてくるかもしれない。
 テレビからずるずる這い出てくるサタンの姿を想像して、ぞっとしない気分になりながら逸らしていた視線を不完全ながら『自称池の女神』へ戻す。
 「……しょうがねえからちょっとだけ付き合ってやろう」
 「はっはっは。最初からそう素直に言っていればいいものを…」
 「……」
 一瞬、『斬っていいかな…』という物騒な思考が過ぎったが、とりあえず付き合った後でも遅くないという結論に達っする。
 「それじゃあ改めて……。
 黒き青年よ、お前が落としたのはー…」
 そう言って、ずぶ濡れのラグナスを引き上げてシェゾに見せる。
 「この、いかにも熱血漢で後先考え無しでパーティの面々を危機においやることが得意な典型的リーダー気質のラグナスか?」
 「オリジナルって言やぁいいじゃねえか。割とぼろくそだな」
 「まあまあ…。それとも─」
 引き続き、また別のラグナスが引き上げられる。
 「この、好きな者には尽くしまくりの精神は恐らく限りなく乙女に近いラグナスか?」
 「……いや、それは絶対にいらん。」
 「なんだ、心の狭い。じゃあ─」
 「まだあるのか」
 まあ、きこりなんか自分の斧のほかに金銀銅の斧を提示されたわけだしこの辺は付き合いだろう。
 びしょびしょのまま放置されているラグナス’sを見やりつつ早くこの遊びが終わることを願う。
 ぱしゃぱしゃという水音の後、三人目のラグナスが引き上げられた。
 「この腹の中では何を考えているか分からない(世間的には腹黒といわれている)ラグナスか?」
 「それは色々問題があるだろうってかどこから見つけてくるんだこんなの」
 「私の力を侮ってはいかん。ちょちょいっと空間を覗いて見つけて……」
 「…」
 遊びのために異空間からわざわざこんなもの(ラグナス)を召喚しているのか。
 ラグナスも随分不憫な役割である。
 「…で?まだあるんだろう」
 「よく分かったな。まあ安心しろ。これで最後だ」
 嫌そうな顔を隠しもしないシェゾに、サタンはまた池の中に手を突っ込んで四人目を引き上げる。
 「このセコイ悪事が得意な俺様勇者か?」
 「そいつは俺とキャラ被るから嫌いだ」
 シェゾにスパッと言い切られ、四人目のラグナス(やっぱり水浸し)がこめかみに青筋を立てた。
 「っお前と一緒にすんなヘンタイッ!」
 「うるせえ黙れ」
 ヘンタイ、の言葉と同時に、シェゾはその辺に転がっていた石ころ(赤ん坊の頭ほどの大きさ)を騒ぎ立てる悪ラグナス目掛けて投げつける。
 ゴしっ。という音の後、短い悲鳴を上げてその姿が池に消えた。
 …悪ラグナス、あえなく退場(撃沈)。
 「…では、この中から選ぶといい」
 悪ラグナスが完全に沈むのを見送った後、サタンが三人のラグナスを指して言う。
 シェゾは唸った。





 ラグナス(本物)を選ぶ
 ラグナス(乙女)を選ぶ
 ラグナス(腹黒)を選ぶ


































 

 
 「一番最初の、オリジナル」
 シェゾはきゅるきゅると目を回しているラグナスを指差した。
 触らぬ神にたたり無しである。
 「そうかそうか。ではお約束どおり正直者には全員や「いらん」
 来るだろうと思っていた台詞を遮り、まだ気絶している様子のラグナスを抱えあげる。
 「これで満足だろう?俺は帰るぞ」
 踵を返して肩越しに見やると、サタンは少し憮然としないながら頷いたようだった。
 「それから、ソレ、ちゃんと元の場所に戻しておけよ」
 ソレ、と残ったラグナスを指差して、シェゾは足早にその場を離れた。
 急ぎ帰ってラグナスを適当な場所におき、そしてワンピース姿で水浴びしている変態がいると通報するために。





 後日、新聞か何かの号外で、自称池の女神とか言う変質者が暫し世を騒がせたが、その女神がシェゾの前に再び現れることはなかった。
 
 「そこ、動くなぁぁッ!」
 「普通動くわッ!」

 そしてシェゾは今日も元気に、散歩の途中にラグナスからの襲撃を受けるのであった。










 ED1・正直者の神を汚す華やかなる者。
 
 でめたしでめたし(ぇ)

 管理人より>何だかわけのわからないギャグでゴメソorz


 PCUP=2004年12月16日


 モドル






























  



 「…二番目のヤツ」
 シェゾは、なんだか少しぐたっとしている乙女ラグナスを指した。
 乙女に近い、とは言えど常に背後を狙われているよりはマシだ、という理由からの選択らしい。
 するとサタンが微かに笑った。
 「んん?何だ?なんだかんだ言いながらもやはりそういう趣味か」
 何か多大な誤解を受けているようだ。
 まだしゃべり続けるサタンに構わず、シェゾはひょいっとその辺に転がっていた石を無造作に拾い上げた。
 「いや、さすが変態……いやすまん何でもないだからその赤ん坊の頭ほどの大きさの石を振りかぶるのはやめてくれないかさすがにソレは私にも効くから」
 「…良し」
 石を放り、シェゾは乙女ラグナスの腕を引いてたたせた。
 ぐたっとしていたのは、単に気を失っていただけだったのか、存外すぐに気がつく。
 驚いた顔になる乙女ラグナスに、シェゾは足元のおぼつかない彼を支えながらサタンを見やった。
 「これで満足だろう?俺は帰るぞ」
 うむ、と頷くサタンに、シェゾは「行くぞ」とラグナスを促して帰路についた。
 手を引かれて、なぜか顔を赤くしているラグナスを少し盗み見やりながら、ふと思う。
 とりあえず帰ったら通報と………。ほんの少し、味見だと。
 









 ED2・真性と乙女。

 めでたしめでたし(?)


 管理人より>何だかわけのわからないギャグでゴメソorz


 PCUP=2004年12月16日


 モドル































 



 「じゃあ、三番目」
 シェゾは、寝ているのか気絶しているのかよく解らないラグナスを指差した。
 「……怖いもの見たさか」
 いち早くその理由を察したサタンに、シェゾは素直に頷いた。
 「まあ、めったにあることじゃないしな」
 「それはそうだが……」
 しぶしぶと腹黒ラグナスを差し出し、サタンはふ、と息を吐いた。
 「しぶるくらいなら最初から用意するな」
 「…いや。選ぶとは思わなんだ」
 「常に先を見据えろよ。俺はいつもお前の思うとおりじゃない」
 なんだかカッコいいことを言いながら差し出されたラグナスに気付けの一発を食らわせる。
 すると、短くうめいたラグナスが目を覚まし、きょろきょろと辺りを見回した。
 「おい、しっかりしろ」
 「……ん…」
 そして─シェゾと腹黒ラグナス、二人の目が合った瞬間、彼らは悟った。
 

 こいつは同類だと。


 「─おい、じゃあこいつは連れて行くぞ」
 サタンを見やって、シェゾは言った。ややぎこちなく頷くサタンに構わず、シェゾは腹黒ラグナスを促してその場から去った。



 ……その後、黒髪の青年と銀髪の闇の魔導師があちらこちらで詐欺まがいのことをしているという噂が立ったとか立たないとか。










 ED3・黒勇者と俺様闇の魔導師


 めでたくなしめでたくなし(爆)



 管理人より>何だかわけのわからないギャグでゴメソorz


 PCUP=2004年12月16日


 モドル
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