ラジオから緩やかに流れる民謡。
ラグナスはそれに良く聴き入っていた。
独りでいるときも、Dシェゾとすごしているときも。
「…ラグ」
「…ぁ?」
愛称を呼んで、ソファに寝そべるラグナスを覗き込む。
ラグナスは民謡の合間に応え、覗き込んでくるDシェゾを見上げた。
「…さっきからずっとそうしているな…」
「うん…。この唄好きだから」
今日の民謡は、他愛も無い歌。確か虫の名前を題した秋の唄だった。
ただ、好きというのには少し寂しい。
「…夕暮れがすきか?」
「…全体的に好き…」
「ふぅん」
再び、目を閉じ世界に浸るその頬に口付ける。
『くすぐったいよ』と笑うラグナスに小さく笑い返して覆いかぶさった。
「何?重いよ…」
「…寂しいだろう…?」
「…Dシェゾが?」
「さぁ」
守ってやらねばならぬほど、ラグナスの身体はか細くもないし、儚くも無い。
けれど、そんな彼でもたまにはこうして抱きしめてやらねば、きっとあっさりと消えてしまう。
「お前は寂しがりやだからな」
「?」
「…こっちの話だ」
「変なDシェゾ…」
ラグナスは、唄が好きだ。
特に、そのときの気分に同調しやすい唄が。
Dシェゾには唄と同調するなどということは無いが、ラグナスに起きる変化くらいは理解することが出来る。
夕焼けに過去を振り返るこの民謡は、どこと無く寂しい。きっとラグナスも何かを振り返って寂しがっている。
事実、抱きしめた身体は、最初こそ変だと笑っていたが、暫く抱きしめているうちにすがるように抱き返してきた。
「ほら…、寂しがりやだ」
「……言わないでくれるかな」
顔を見やると、頬を染めたラグナスが悔しそうな顔で見上げてくる。
可愛いなと笑むと、察しられたらしく少し蹴り上げられた。
ラジオから流れる唄がふつりと切れる。
Dシェゾは、それを待ってから唇を重ねた。
****END****
管理人より>某方へ、連載ものを待たせてしまっているお詫びに捧げました。
PCUP=2005年1月8日
モドル