「君が好きだ」と言うこの青年に、まるで嫌悪がなかったから、それに甘えることにした。
実は自分も青年が気になっていたと言うことは、言っていないけれど。
「シェゾ?どうかしたか?」
「…いや」
他愛ない散歩道。シェゾが歩みを止めたのが気になったのか、少々後ろを歩いていたラグナスが隣に並んで訊ねた。
自分を見上げる鳶色はまるでただの青年で、普段は正義の名の下に剣を握る男だとは到底思えない。
「気になったことがあってな」
「うん?」
いい天気だと微笑むラグナスの顔を横目にして、シェゾは頭を掻いた。
「お前、いつも横じゃなくて後ろにいるよな」
「何のことだい?」
「…散歩してるときとかよ」
「あぁ…」
今だってそうだったと続けて言うと、ラグナスは少し唸った後照れたように笑う。
「後ろの方が、シェゾがよく見えるからね」
「はぁ?」
意味が解らないやつだと顔ごとラグナスに向き直るシェゾに、青年は笑いながら3歩ほど後ろに下がった。
それから、ほら、というように得意げな表情で言う。
「シェゾは、俺より大きいからさ…」
「そりゃそうだが、だからなんなんだよ」
「横じゃ見えないんだよ、見上げないと」
「別にいいじゃねぇか」
「それじゃイヤなんだよ」
ラグナスは歩き出すシェゾの後をついて足を踏み出した。
まあ、殺気を感じないし、相手が相手だからシェゾが背後を許しているというのもあるが、それにても不可思議な行動だ。
青い空を見上げたり、必要以上に足元を見たりと。何気なく落ち着かなくなるシェゾに、ラグナスはつい噴出す。
「…何が可笑しい」
馬鹿にされて腹立たしいような、恥ずかしい場面を見られて恥ずかしいような妙な感情を顔に表して睨んだ。
ラグナスは困ったように笑い、仕方がないのでシェゾと肩を並べて見上げてやる。
「別に…」
「嘘吐け」
拗ねたシェゾの気配に、またラグナスはくすくすと笑いながら空いた手で軽くシェゾの長い指を引っ掛けた。
ん、という声の後、暫く戯れるように指を絡ませた後にシェゾの手がラグナスのそれを掴む。
ラグナスが嬉しそうに顔を緩め、シェゾは我存ぜずとでも言いたげに顔をそらした。
ただその頬が微かに桜色に染まっていたのを見せたくなかったからかもしれないが。
ラグナスは、そんなシェゾと握った手をぶらぶらと振りながら、また数歩後ろに下がる。
すると、視界に彼の姿がすんなりと収まるのでまた笑みを零した。
シェゾの姿をずっと見ていたいというのは嘘ではない。
けれどこの行動にはもう一つの意味がある。
─それは拘束。
視界に彼を留める事で、もうどこにも行ってしまわないように。
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管理人より>>携帯サイト15800番斬番リクエストです〜。
えー、ラグシェ甘とのことで、…なんか恥ずかしいですな今更こんなの(ぉ)
タイトルはあるソフトが弾き出してくれました。
UP=2006/04/22
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