柔らかな拘束。
 静かな監禁。
 これは檻。
 


 「…お前は何でも似合うな」
 Dシェゾはぽつりと呟いて、長い銀の髪を撫でた。
 「なあ、『シェリー』?」
 「……」
 くすくすと笑う声が聞こえて、『シェリー』はゆったりとした動作で身を起こす。
 黒いドレスがさらりと流れ、少し痩せた『彼女』の身体のラインを隠した。
 「…」
 手を取られて口付けられる。
 それを黙って見つめていると、紅い瞳が楽しげに細まった。
 
 「…逃げないのか。シェゾ」

 久しく、本当の名を呼ばれる。
 シェゾはそれに微かに反応する。
 




 四角い、窓のない暗い部屋。
 ─彼はそこに『シェリー』として「囚われて」いた。

 一体どれ程ここにいるのかは分からないが、退屈しないようにの配慮か置かれた書物も、随分前に読みつくした。
 だから多分、一ヶ月や二ヶ月ではないだろう。
 それはやせ細った自分の身体が物語っていた。
 食に不自由はしていない。ただ、運動量がないから、筋肉が落ちたのだ。
 





 捕らえたのは、彼のドッペルゲンガー。
 Dシェゾ、と、皆に呼ばれる男。
 





 
 そいつが何故そんな行動に出たのかは、知らないし、知りたくもない。
 だから、何もしない。
 ただされるがままにされてやる。
 
 女の姿をさせられても抵抗しない。
 どうせ一時の間だけ。
 女のように扱われても抵抗しない。
 どうせ今だけ。





 ベッドに縛り付けられているわけでは無いし、繋がれているわけでもない。
 部屋の鍵はいつでも開いている。
 逃げようと思えば逃げられるのに、逃げられない。いや。




 シェゾは逃げない。
 いつまでも。







 だってDシェゾがあまりにも優しいから。
 この拘束があまりにも柔らかいから。









 これは、真綿の檻。
 心地のいい、真綿の。













 出ようと思えば出られる檻。
 鍵はいつでも開いている。



 それでも出ない。出たくない。
 














 あまりにもこの真綿の檻が心地よすぎるから。











 コ ノ オ リ カ ラ ハ デ ラ レ ナ イ。














 V…END LESS…V



 管理人より>最近Dシェシェを書いてくれとのリクがやたら多いです(笑)
 いや、一応TOPに書いてあるんだから書かないといけないんだけど…。
 …ごめんなさいすみません真っ暗Dシェシェでゴメンナサイ(平謝)

 PCUP=2004年8月17日


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