コトリと、胸に誰かの落し物。
ほっこりとした、むず痒いような、妙な落し物。
笑顔を見せられる度、会話をする度、胸には落し物が溜まっていった。
「何、こっち見てるんだ?」
凝視してしまっていたのか、ラグナスに問われて初めてシェゾはそれに気付く。
「何でも、ない」
「変なヤツ」
─ほらまた、笑顔の度に胸に落し物をしていく。
「変で悪かったな」
「はは、そう腐るなよ」
冗談だとラグナスが苦笑すれば、シェゾは意地になったように口を閉ざして背中を向けてしまった。
まるで、「これ以上落し物をされてはたまらない」というようだ。
だがそんなことをラグナスが知るよしもない。
ラグナスは突然不機嫌になったシェゾの背を追って歩き出した。
暫く無言で歩き、自分の意地がバカらしいと思ったのか、シェゾは幾つか話題を引き出してはラグナスに声を掛けてやる。
するとラグナスは、その話題を一つとして逃さぬように笑顔と笑い声を交えて応答する。
顔を見ていないのに、シェゾの胸にはまた一つと落し物が増えていった。
笑い声だけでもいつの間にか、そんな風になってしまったらしい。
落し物は、随分溜まっていた。
返すことがないから、溜まるのは当然なのだけれど。
そうした落し物はいつしか、一つの固まりになって、シェゾの中で小さく暖かく、息づき始める。
「─シェゾ」
耳に触る声が心地よい余韻を残して消えていく。
「何だよ、ラグ」
暖かい感情で満たされる落し物。
それの名を、誰かは「恋」とか言っただろう。
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あとがき>>携帯斬番16200(1200番)リクエスト…
の、代わりです^^;(リク=シェラグイラスト)
ツーショット苦手ですので、小説に変えさせていただきました〜。
UP=2006/05/28
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