あるゲームの二週目以降のネタバレ&ダブルパロディです。
お気をつけ下さい。
久々に腕試しをしようと、暇そうなラグナスを誘ってやってきた変わった洞窟。
中からは美味そうというか、何かの店を思い出す異様な匂いが漂ってきていた。
だが、そんなことを我らが闇の魔導師が気にするはずもない。
何か逃げ腰であるラグナスを無理やり引っ張り込み、シェゾはその洞窟へと足を踏み入れた。
なんでやねん拉麺洞
「ぃぎゃァアア──ッ!」
それから数分もしないうちに、その洞窟は二人の悲鳴と熱い汁で溢れかえった。
いや、熱い汁と言うのはそのまんま、醤油拉麺の鶏がらスープやら、とんこつのとんこつスープやらのことであって決して怪しいモノではない。
どうしてそのようなことになったか?
答えは簡単である。
その洞窟に棲む魔物が全部が全部、拉麺のようなモノだっただけだ。
知らずにこの洞窟に入った二人を出迎えたのは、湯気と美味そうな匂いを漂わせる色とりどりの拉麺たちだった。
最初こそ美味そうだなどと悠長なことを言ってはいられたものの、すぐにそのような余裕は失せた。
何せこいつらは、自分の汁や麺で攻撃を仕掛けてくる。
食用ではないその熱さは、はっきり言って「ちょっとした」火傷どころではすまなかった。
「─おいラグナスッ!背後─っ…」
「ごめん、無理だ!暫く持ちこたえてくれっ!」
「俺だってもう限界だァ!」
こんなギャグのような敵によもや生命の危機を感じるなどと、あっていいものだろうか?
いやないだろう。
シェゾは本気で泣きそうだった。
はっきり言って、ラーメンが嫌いになりそうだった。
例えそれが襲い掛かってこなくてもだ。
「いや、普通ラーメンは襲ってこないものだから、いやしかし襲ってこなければいいと言うのとは」
『チャーシュー追加ー!』などと叫びながらとんこつスープをぶちまけてくる拉麺(…のような魔物)を、闇の剣で袈裟掛けに切り捨てる。
だがしかし、更に参ったことに相手には全く効果がない。
…違う。ないのではない。 効果はあるが、それがあまりにも微弱すぎるのである!
もはやラグナスなど戦いを放棄し、逃げるだけとなっていた。
「─ッとにかく、脱出するぞ!」
はっきり言ってレベルが違いすぎた。
二人とてこんな相手に遅れを取ったなどという激しく情けない事実を受け入れることは出来ない。
だが、ぶっかけられる鶏がらスープに与えられる痛みは現実なのである。
まさに、殺人料理とはこのことであろう。
シェゾの声に頷くラグナスを横目に、シェゾは後退した。
時折遠距離攻撃の可能なとんこつ拉麺から手痛い攻撃を受けるが、辛うじて入り口付近まで辿り着く。
─が。
入り口から外へ出ようとしたシェゾが、眉間にしわを寄せる。
「シェゾっ、早く!」
悪魔のような拉麺たちをホーリーアローで牽制していたラグナスが焦った声をあげるが、シェゾはまるでパントマイマーのように洞窟の入り口に手をかざしたまま動かない。
「お、おい、…シェゾ?」
まさか、立ったまま討ち死にしたのではとラグナスが窺うと、絶望的な響きが落ちた。
「…出られん…」
「─なっ!?」
そんな訳ないだろうと叫ぶが、シェゾがこの状況で悪ふざけをするはずがない。
試しにラグナスが入り口に手をやれば、そこには何か見えない力が働いて、二人を妨げていた。
舌打ちしたシェゾが洞窟内を振り返れば、多数押し寄せる拉麺器の向こう側に、ひときわ大きな拉麺─多分、ここのボス的存在が漂っていた。
青白く光を発しているその姿は、もはや地球外生命体以外の何者でもない。
「─あ、アイツを倒さないと出られないってことか?」
「嘘だろ…」
拉麺たちの輪は徐々に狭まり、二人を取り囲んでいる。
この普通サイズの拉麺ですら二人を窮地に追い込むというのに、あんな巨大なものに来られたら─
結末は見えている。
『…』
二人は沈黙した。
視界が滲んだのは、もしかしたら涙が浮かんでいたせいかもしれない。
身を寄せ合い両手を握りあう二人に、無情かな、助けは訪れなかった。
『あ゛ぁぁ゛あぁ゛ぁあ゛あ゛──ッ゛!』
次に二人が気がついたのは、洞窟の近くにある村の診療所だった。
包帯だらけのお互いの顔を確認した後のったりと首をめぐらせれば、茶髪の少女だの青い髪の女だの見知った顔ばかりがそこに寝ている。
二人が二人とも、寝言で『拉麺、拉麺怖い』、『とんこつがーッ…!』等と呻いているところを見ると、アレは夢ではなかったらしい。
ラグナスとシェゾは、もう一度顔を見合わせた。
それから、大きな溜息をついてまた目を閉じる。
もう、二度とあの洞窟には近寄るまいと、固く固く決意を固めて。
/*Fin*/
アトガキ>
すいません。知ってる人だけ笑ってください。
知らない人は理不尽さに笑ってくださ…っ(ヒィ)
いえ、管理人も初めてあの洞窟に行った時は、はっきり言って早まったと思いました。ええ。
PCUP=2006/06/09
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