「好きだ…好きだよ…」
 耳元で繰り返される言葉は、確かに欲しかったもののはずなのに。
 今は何故か、それが壊れたオルゴールのように聞こえた。




 れたオルゴール




 「好きだよ…」

 違う。

 自分が欲しかったのは、ただの言葉ではなく…

 「好きだ…」

 自分を見つめるその瞳と

 「愛してるよ…」

 自分を抱くその腕と

 「…好きだ」

 自分を許容してくれる、心が

 「好きだよ、好きだ…」

 欲しかっただけなのに。

 どこで、間違えてしまったのか。

 どこから、狂ってしまったのか。

 どうして

 どうして

 ど う し て … … …

 自分が映らない虚ろな瞳を手に入れて

 自分はどうしたかったんだ?

 俺はどうしたかった?

 「君だけだよ…」

 こんな、自我の無い人形のような彼を

 本当に自分は望んだのだろうか。

 このような『束縛』を

 本当に…………。

 「─シェゾ、君だけ」

 「君だけが、好き。君だけを愛してるよ。君が望むだけ……」

 ラグナスが、呟き続ける。

 ベッドの上でシェゾを抱きしめ、虚ろな光を灯す鳶色の瞳で。


 感情の無い、がらんどうな声で。

 壊れたオルゴールのように。

 ずっと。それだけを。

 シェゾは、緊縛されたまま、抱きしめられたまま

 ずっと、それを聞いた。


 ─チ ガ ウ …


 「ずっと、一緒にいるから…」


 ─違 う …


 「ずぅっと、俺は、君だけ………」




 こんなはずじゃなかった。
 こんな彼を見たかったわけじゃなかった。
 こんな事を言わせたかったわけじゃなかった。
 こんな事をされたかったわけじゃなかった。
 なのに。




  「愛してる…」



 壊れたオルゴールを聴きながら、シェゾは重たい瞼を閉じた。



 その拍子に、温かい何かが、頬を伝って落ちた。




 ■■■END■■■




管理人より>

 記念すべきだい一作がコレデスカ自分。…はい、申し訳ありません…(汗)
 本始動を開始次第、コレの前後をUPしようと思います(苦笑)

  更新日2004年03月29日

モドル
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送