ほれ、と、シェゾから渡された小さな小箱。
掌に載るくらいの、本当に小さな箱。
それを貰ったのは、一緒になって丁度一年経った時だった。
「…何だいこれ」
「まあ、開けりゃあ分かる」
「…?」
ラグナスは暫くそれを物珍しそうに眺めた。
シェゾからの贈り物なんてそうそう無いからだ。
振ってみたり、くるくると回してみたりする。
「…開けないのか?」
「開けたら煙出たりしない?」
「お前俺を何だと思ってるんだ」
その問いに、ラグナスは一瞬きょとんとし、少し上目で考えた。
それから、視線を戻して誤魔化すような曖昧な笑みを浮かべる。
「………内緒。」
「…いいから開けろ」
「はーい」
子供のような素直な返事を返しながら、小箱を開ける。
そこには、シンプルなデザインの指輪が2サイズ。
「…指輪?」
「ん」
「二つあるよ?」
「片方は俺のだ」
あっさりと。
シェゾはそう答えてみせる。
「…ハイ?」
「片方は俺の。」
「…えーっと」
意味を反芻してみる。
今時分の目の前には、二つのサイズの違う指輪がある。
そして、その片方はシェゾのものだという。ということは必然的にもう一つは自分のものと言う事になるわけで。
つまり。
「ペアリング?」
「…まあちょっと違うがな。そんなもんだ」
口に出してそれを肯定され、自分が少し赤くなったのが分かる。
それを見てシェゾが微かに笑った。
「つけてやるから、貸せ」
「あ、うん。はい」
渡して、右手を出すとまた笑われた。
何だ何だと訝しむと、左手を取られて薬指にはめられる。
「…………ぁ」
「意味は分かってるな?」
「……」
恥ずかしくて顔が上げられない。
シェゾがまた楽しそうに笑う。
「…シェゾって偶に凄く卑怯だ」
「最高の褒め言葉だ」
また笑われる。
それは悔しいけど、でもこの指にはめられた指輪は嬉しくて恥ずかしい。
黙って俯いていると、ちょいちょいと肩を叩かれた。
深呼吸してから顔を上げると、もう一つの指輪を差し出される。
もうそれの意味は分かっていたから、受け取って、シェゾの左手の薬指にはめた。
満足気に笑う。それに、すこし照れながらも笑み返す。
「これは…俺とお前を繋ぐもんだからな?失くすなよ?」
「…うん…」
「…” ”」
耳元で囁かれて、ラグナスは赤い顔を更に真っ赤に染めた。
これは僕等を繋ぐもの。
僕等を繋ぐ大切な輪。
もう絶対に、はなしたりなんかしない。
** E N D **
深夜無月より>
葉月さんのサイトと相互させていただいた記念にv
…いやもうブッちゃけ恥ずかしい限りです(何)
PCUP=2004年8月17日
モドル